上野智弘の日記

日常をだらだらと綴る


キット頒布のカラクリ

先日、キット頒布について毒づいてしまった。少し大人げなかったかもしれない。ちょっと言い訳しておく。
プリント基板は、業者に作ってもらう必要がある。ここで問題になるのは1枚あたりの製造コストなのだ。例えば、今回作ったDAI搭載R=2Rラダー型ディスクリートDAC基板は、ここの格安試作基板コースで作ってもらっている。今回の基板はパターンが2層、片面シルクで寸法が110mm×70mmであり、製造コストは以下となる。興味があれば、上記サイトの自動見積もり(無料で試せる)でいろいろ試してみると面白いだろう。
・1枚の場合 : 17980円 (1枚あたり17980円)
・10枚の場合 : 21880円 (1枚あたり2188円)
・50枚の場合 : 51880円 (1枚あたり1037.6円)
今回の基板は、1枚1000円ちょっとならば欲しいという人もそれなりにいるかもしれない。ただし、さすがに17980円でも欲しいという人はいないだろう。だったら2188円ならば欲しいという人はいるだろうか? 3000円、4000円だと?  結局、基板はなるべく製造数を増やして、1枚あたりのコストを引き下げるしか無い。
だが、ここで別の問題がある。枚数を増やせば増やすほど、頒布の手間が正比例で増加するのだ。50セットの頒布だと、1人で2セット希望する人がいるだろうから全数が捌けると約30人に、メール/掲示板での応対、袋詰め、宛名書き、発送、入金確認、在庫管理、動作しない場合の修理対応など、かなり疲れるイベントをこなさなければならない。もちろん、マニュアルや頒布の要項の作成、掲示板の設置、添付部品や梱包材の購入等が必要である。私はどこでそのモチベーションを得ることになるのだろうか。
そしてさらに、もしも作った人の気に入らない場合は、陰口を叩かれたりオークションで売り飛ばされたりして、結局は私の知るところとなり、悲しい思いをすることになる。品質が悪いならば当然のことなのだろうが、それだけのリスクを常に負っているわけである。裏を返せば、アマチュアが頒布するキットを、秋月キットのような商品と勘違いしている人がいるのかもしれない。そしてまたまたモチベーションは低下していくことになる。
気軽にメールや掲示板で「キットとして頒布してくれ」と言ってくる人も、こうした内情を知っていたならばとてもじゃないが気軽に言えないはずだ。きっちり利益を確保して商売にするなら別なのかもしれないが。それでも頒布を希望するのならば、頒布作業を肩代わりしてほしいのだが… 自分用のキットさえ手に入ればいいという人ばかりなのだろうか。他の同士のために一肌脱ごうという人はいないものかねぇ。

2006年8月3日 木曜日 12:14

カテゴリー:キット頒布