手作りアンプの会 2007年 夏 お寺大会 『6V6アンプ大集合』に出品するために、6V6アンプを作成しました。
この大会では、原価3万円のコースとフリースタイルがあり、今回は3万円コースで参加することにしました。 原価3万円だと普通に作ればシングルアンプ1台ちょうどくらいですが、音質では強者ぞろいですから入賞するのですら難しいため、ウケ狙いでプッシュプルアンプ、しかもモノラルアンプを2台作ることにしました。 つまり、モノラルのプッシュプルアンプを1台当たり1万5000円で作ることになります。 これは結構難しい...
プッシュプルのモノラルアンプを作る上で、コストを抑えるために、以下の工夫をしました。
五極管接続だとスクリーングリッドの安定化でコストがかかるため、三極管接続にします。
普通に6V6を2本だと、280Vで100mAくらい欲しいところですから、たとえばノグチトランスのPMC-100Mとなります。 ただし、PMC-100Mでは5,355円もしますので、あっという間に予算オーバーしてしまいます。 そこで、春日無線変圧器の7Z40WCD 2500円を使用します。 これは170V、200V、220Vのタップがあり、DCで95mAとれるので、6V6用のB電源を作るのにぴったりです。 6.3Vタップもありますが6V6を2本と初段の真空管のヒーターには無理でしょうから、別にヒーター電源を用意する必要があります。
6.3Vのヒータートランスを使用しても良いですが、ウケ狙いとしては面白くありません。 そこで、秋月電子通称のスイッチングACアダプタ 12V 1.2Aを使用します。 700円と微妙に高価ですが、初段と6V6のグリッドバイアスにも使用できるので面白そうです。
初段は12AU7か12AT7を1本で行います。 普通は差動、PK分割、ムラード型での位相反転を行うと思いますが、やはりウケ狙いでトランスによる位相反転とします。 もちろん、高価なインターステージトランスは使えませんから、タムさんのE90CC全段差動ミニ・アンプのアイデアを頂いて、入力でいきなりトランス反転することにしました。 E90CCアンプではサンスイのST-30を使用していますが、510円と高価なので、シオヤ無線電機商会の10kΩ=10kΩ小型トランス 273円を使用します。 サンスイのSTシリーズはパーマロイコアですが、シオヤ無線で扱っているものはパーマロイコアでは無いそうです。 まぁ、今回は細かいことは気にしないことにします。
こればかりは、それなりのものを使うしかありません。 素直に、東栄のOPT-10P (8kΩ) 2888円を使用します。
コストに少し余裕があったので、整流にチョークコイルを使用します。 100mA流せて、1Hは欲しかったので、ノグチトランスのPMC-115H (1H 150mA)にしました。
以前から雑誌で見てて試してみたかった、センターチョークを使ってみます。 これも、PMC-115Hにします。 本当は10Hくらい欲しいのですが、コストの制約が厳しくて無理でした。
もちろん整流管は無理ですから、ダイオードで整流します。 600V 1Aのブリッジダイオードは50円と非常に安価です。 見た目はとても小さくて不安ですが...
平滑のコンデンサは、シオヤ無線で特売の、160V 220uFの電解コンデンサ 80円を使用します。 ダイオードの直後は3個シリーズにして480V 73uF、チョークの後は4個を直並列にして320V 220uFとします。 また、電解コンデンサには100kΩの抵抗をパラに接続して、電圧が平均してかかるようにするとともに電源OFF時のチャージを燃やすようにします。 ただし、大会の規定では普通に店頭で購入できる価格で計算しなければならないため、Digi-keyでの同等品の10個以上の価格 97.6円で申告することになります。
コストはかけられませんので、エスエス無線の230mm x 150mm x 50mmの弁当箱シャーシ 693円にします。
トランス、チョークはすべてシャーシ上面に配置します。
平滑部分は、プリント基板を使用しました。 ラグ板1個分のコストで、プリント基板を1枚使用できます。
初段、カップリングコンデンサ等もプリント基板を使用しました。 プリント基板上の部品配置は、プリント基板CADソフト EAGLEを使用しました。 すっきりと配置、配線が出来るので、手配線の場合でも便利です。 (この回路図をクリックすると、原寸で表示します)
半固定抵抗 VR1で、初段のカソード電位を1.7Vに調整します。
次に、VR2、VR3で、6V6のプレート電流を40mAに調整します。
最後に、2台の出力が一致するよう、VR1で調整します。
当初は、入力トランスの1次側を入力端子に、2次側を初段のグリッドして2次側の中点をVR1でマイナスに引いていましたが、どうしてもノイズが取れなかったため、今回の方式に変更しました。 位相反転の性能は充分に合格で、低コストで簡単ですから積極的に使う価値のある方式だと思います。
低域で不自然にパンチが無いため、当初は電解コンデンサを5個にしていましたが、2個追加して7個にしました。 ただし、本当の原因はセンターチョークのインダクタンス不足かもしれません。
とりあえず、3万円でモノラルプッシュプルアンプを2台作ることは出来ました。 もう少しコストをかけて余裕のある作りにしたいところですが、なかなか侮れない音がしています。 当分は主力アンプとして活躍してくれそうです。
ただし、ACアダプタを使用したり入力がトランスでの位相反転だったりで普通の作りではありませんので、あまりお薦めできる構成ではありません。 このアンプを参考にするのは大歓迎ですが、良く理解をした上でご活用ください。
2007/5/13 上野