19 B級プッシュプルアンプ

はじめに

手作りアンプの会の2008年夏のお寺大会のテーマは、「直熱管大会」でした。 300Bや2A3、211や845、目立つ球ならSV811-3のようなトリタン球など、王道で作れば良い音がするでしょうが、それではアマノジャクな私としては面白くありません。

というわけで、小出力アンプを考えます。 最初は手持ちの30で考えましたが、さすがに小出力すぎて却下。 31が手に入れば面白いのですが。 1C5-GTや3Q4も考えましたが、多極管で小出力だと音が面白くなさそうだし。 そこで目に留まったのが、クラシックコンポーネンツで1200円/本とそこそこ安価な19です。 B級プッシュプル専用とイロモノ系というところが気に入りました。 静止時のプレート電流が5mAとエコロジーなところもナイスです。

突き抜けたエコロジーを目指す

考えてみれば、オーディオは贅沢品です。 真空管アンプは、その中でも効率の悪い、エコロジーの正反対の存在です。 このままでは、反社会的な存在として陽の当たるところに出られなくなってしまいます。

そんな悪条件を打開すべく、直熱管という縛りの中で、エコロジーなアンプを目指すことにします。 19でB級プッシュプルとすれば、それなりにエコロジーですが、こんな平凡なエコロジーではアピールできるわけがありません。 かといって、太陽電池パネルを背負うのも大掛かりすぎますし、運用時間もたかが知れています。

そこで、発想を転換して、増幅作用で消費した電力のために生じたCO2をアンプで吸収することでCO2の排出権取引を行い、社会的に認められる存在に這い上がることにします。

ぶっちゃけた話、鉢植えにアンプを仕込むことにします。

外観

小さめのパキラに小さいST管が2本と、なんとも癒し系な外見です。

回路

電圧増幅段と位相反転は、真空管での差動、真空管とトランスなどいろいろと考えられますが、消費電力が大きくなりエコではありません。 また、B級だとグリッド電流も多く流れそうなので、強力にドライブする必要があります。 いろいろ考えましたが、音質面には目をつぶって、OPアンプとしました。 19のグリッドは±20V程度のスイングを要求するので、NJM4580の定格最大である±18Vとして、ボルテージフォロアでドライブします。

19のフィラメントは2.0V 0.26Aと一般的なトランスでは対応品が無いので、6.3V 1AのトランスからLM317で0.26Aの定電流点火としました。

実装

100円ショップのタッパーに組み込みます。 なるべく小さくなるよう、18cm×12cm×7cmのものにしました。 トランス類は薄いMDFの板に組み付けてタッパーに押し込みます。

ケーブルはタッパーの側面に穴をあけて引き出し、バスコークで防水処理をします。 なお、鉢植に組み込むので、バスコークは防カビ剤の入っていないものを選びます。 真空管ソケットが湿気で痛まないよう、木の容器で包みました。

ちょうど良い大きさの植木鉢が見つからなかったので、9mmのシナ合板で植木鉢を作りました。 湿気で腐らないよう、塩ビ版とバスコークで内側を覆っています。

おわりに

世界初?の、CO2排出に配慮した真空管アンプとなりました。 おまけに外見も癒し系です。 音も予想外に普通で使える感じです。 何ともステキなアンプになりました。


2008/5/吉日 上野