EAGLEはドイツ製のソフトですので、日本でアマチュアが入手可能な部品はあまり登録されていません。 たとえば、2SC1815や2SA1015といったよく使う部品すら登録されていませんし、あったとしても使いやすいかは個人の好みもありますので、実際に基板を作るためには部品ライブラリの作成を行うことになります。
ライブラリの作成は慣れないと大変ですが、自分好みのライブラリを作成できれば作業効率がかなりアップします。
部品のライブラリは、ライブラリファイルにまとめて格納されます。このライブラリファイルは複数作れますので、今回はプロジェクトフォルダの下にライブラリファイルを作成することにします。
Control PanelのProjectフォルダ配下のsampleフォルダで右クリックをして、New → Libraryとするとライブラリ編集のウィンドウが開きますので、そのウィンドウでFile→Saveとしてセーブします。 ここでは、sample.lbrという名前にします (sampleプロジェクトのフォルダに保存されます)。
部品ライブラリは、回路図用のSymbolライブラリ、パターン図用のPacakgeライブラリ、それらを結合したDeviceライブラリからなります。
ここでは、例として、ブリッジダイオードのライブラリを作成してみます。
まずは、回路図用のライブラリ (Symbolライブラリ) を作成します。 ライブラリ編集ウィンドウで、Symbol編集ボタンを押します。 New の場所にSymbol名 (ここではBridge_Diode)を入力し、OKを押します。 すると、Symbol編集画面になります。
ピン(端子)を配置します。 ブリッジダイオードは4本の端子があり、それぞれ入力が2本、出力が2本ですので、ここでは左向きのピンを2本、右向きのピンを2本とします。
ピンには以下の属性を付与します。 交流の入力をIn、±の直流出力をPwrとすることにします。 また、ピンの長さはmiddle、ピン表示(Visible)はPin、ピン機能(Funciton)はNoneにします。
属性 | 意味 |
---|---|
NC | 何も接続しないピン |
In | 入力 |
Out | 出力 |
I/O | 入出力の双方向 |
OC | オープンコレクタ、オープンドレイン |
Pwr | 電源 (Vcc, Gnd, Vss, Vdd など) |
Pas | パッシブ。抵抗、コンデンサなど |
Hiz | ハイインピーダンス |
Sup | (使用しない方が良い) |
ピン表示 | 意味 |
---|---|
Off | PinもPadも非表示 |
Pad | Pin(そのピンの名前)のみ表示 |
Pin | Pad(ピン番号)のみ表示 |
Both | PinもPadも表示 |
ピン機能 | 意味 |
---|---|
None | 通常。DotでもClockでもない |
Dot | 負論理 |
Clock | クロック |
DotClk | 負論理でクロック |
配置したピンの名称は、P$1とかのデフォルトのものになっていますので、分かりやすいものに変更します。 入力の2個はAC1とAC2(両方ともACとしたいところですが、複数のピンに同じ名称はつけられませんので、AC1とAC2とします)、出力はVccとGNDにします。
ピン名の指定は、Nameボタンで行います。
Wireボタンで、回路図用の部品の絵を描きます。今回は四角い箱にしました。
絵を描画する場合は、レイヤーを「94 Symbols」にします。
部品名はC1,C2のような部品の通し番号です (LM7805のように部品名と直結した名称でも構いません)。Textボタンで文字描画にして、レイヤーを95 Namesで「>NAME」とします。
部品の値は抵抗値、容量、耐圧などの値です。Textボタンで文字描画にして、レイヤーを96 Valuesで「>VALUE」とします。
これで、Symbol作成は完了です。
パターン図用のライブラリ (Packageライブラリ) を作成します。 ライブラリ編集ウィンドウで、Package編集ボタンを押し、New の場所にパッケージ名 (ここではBridge_Diode_4P)を入力し、OKを押すと、パッケージ編集画面になります。
Padは、部品をハンダ付けする部分です。 リード線などスルーホールにはんだ付けする場合はドーナツ型、チップ抵抗など表面実装タイプのものは長方形です。
今回はスルーホールタイプなので、ドーナツ型のPadを使用します。 Padボタンを押して、Padを配置します。 形状は円形、ドリル穴(drill)はブリッジダイオードの足が1.27mmなので59.055mil (1.5mm)、Diameter(ドーナツ型の外径)はautoとします。 ピンの間隔が5.08mm (200mil)で4個のPadを並べます。
なお、グリッドは100mil間隔としています。
Nameボタンを押して、PadにそれぞれPad名を付与します。 今回は、1ピンから1, 2, 3, 4とピン番号と同じ名前としました。
シルク(プリント基板に白色で印刷される模様)を描画します。 線でも文字でもOKです。 レイヤーは21 tPlaceです。
部品名はC1,C2のような部品の通し番号です。 Textボタンで文字描画にして、レイヤーを25 tNamesで「>NAME」とします。
部品の値は抵抗値、容量、耐圧などの値です。 Textボタンで文字描画にして、レイヤーを27 tValuesで「>VALUE」とします。
これで、Package作成は完了です。
作成した回路図用ライブラリ(Symbol)とパターン図用ライブラリ(Package)を結合します。
ライブラリ作成ウィンドウでDeviceボタンを押し、デバイス名を入力します。今回はDiode_Bridge_1としました。
左端に並んだボタンの中のAddボタンで、先ほど作成したSymbolからBRIDGE_DIODEを選択し、左側の大きなウインドウの中央に配置します。
次に、右下のボタンの中のNewを押し、先ほど作成したPackageからBRIDGE_DIODE_4Pを選択します。
さらに、右下のボタンの中のConnectを押し、SymbolのピンとPackageのPadを結び付けます。 1ピンはVccなので、左側のG$1:Vccと中央の1をクリックしてConnectボタンを押すと、左側と中央から消えて、右側にG$1:Vcc 1と表示されます。 これらを全部のピンで行います。
右下のPrefixを押して、部品番号の頭文字を設定します。 今回はダイオードなのでDとしました。 これにより、この部品を回路図で複数個置いた場合に、デフォルトでD1, D2, D3...と番号が付いていきます。 抵抗はR、コンデンサはC、電解コンデンサはCC、ICはUやIC、トランジスタはQなどが良く使われるようです。
最後に、この部品でValueを使用するかを右下のOn/Offで設定します。 抵抗やコンデンサなどでは抵抗値や容量などを表示すると便利ですが、ICなどでは値が無いためOffで良いでしょう。
これで、ライブラリ作成はすべて完了です。セーブしておきましょう。
では、早速使用してみましょう。 Control Panelで先ほど作成したライブラリファイルの中を見ると、作成したDeviceのDIODE_BRIDGE_1とPackageのBRIDGE_DIODE_4Pがあります。(なぜかSymbolは表示されません)
ここで、sample.lbrの右側に小さな白丸が表示されています。 この状態では、回路図エディタで参照できませんので、白丸をクリックして大きな緑の丸に変更します。
では、回路図エディタでこのライブラリからブリッジダイオードを使ってみます。 回路図エディタでAddボタンを押すと、先ほど作成したSampleライブラリがあって、その中にDIODE_BRIDGE_1があるでしょう。
このようにして、ライブラリを自由に作成することができます。 実際には、さらに便利なライブラリ作成の技がありますので、研究してみてください。