フォトカプラでの電源分離

デジタル系(DAIなど)とDACの電源系を分離するために、フォトカプラを使用しました。

製作の目的

前回製作したCDプレーヤーでは、DACはR=2Rラダー型ディスクリートDACを使用しています。 このDACは74HCシリーズのロジックICを7個使用しているだけで消費電力は低いですが、なんと電源を供給しなくても、その前段のFIFOバッファ基板からのシグナル3本 (BCK、LRCK、DATA) だけで問題なく音声信号が出力されてしまいます (音は少し悪くなりますが)。

74HC14の3ユニット分が出力する電力で動作してしまうのも驚きですが、これはこの3本のシグナルを通して電源が繋がっている(?)とも考えられ、せっかく各基板で三端子レギュレータ (78L005) を使用して電源を分離してもシグナルを通してDAI/FIFOバッファ/CD-ROMドライブなどからデジタルノイズが混入しているはずです。そこで、フォトカプラを使用してシグナルから混入するデジタルノイズを遮断することにします。

フォトカプラとは、LEDとフォオダイオードが封入されたICで、ICの中で光を使用して絶縁するものです。 CDトランスポートとセパレートDACでの間のTOSリンクを使用した光ケーブルでの伝送のようなものです。

回路

フォトカプラは、東芝のTLP552を使用しました。 千石電商で、240円で売られています。

回路図の、フォトカプラの左半分とその左側がDAIからの部分、右半分とその右側がアナログDAC向け部分です。 TLP552のLEDは8mA以上の電流で駆動する必要があるため、74HC14を2ユニットパラレルにして使用します。 また、TLP552の出力はオープンコレクタのロジック出力なので、300Ωでプルアップします。

R=2Rディスクリート型DAC専用なので、ビットクロック(32fs、1.4112MHz)、L/Rクロック (44.1kHz)、シリアルデータの3本分しか回路を搭載していません。

出力波形

フォトカプラの出力

フォトカプラの入力(上)と出力(下)で、ビットクロック(32fs、1.4112MHz) を比較しました。 立ち下がりは結構急峻ですが、立ち上がりがなまっています。 300Ωのプルアップでは、1.4MHzのクロックを急峻に立ち上がらせるのは難しいのでしょう。

74HC14での波形整形

フォトカプラの入力(上)と、フォトカプラの出力を74HC14を通して波形整形したもの(下)の比較です。信号は、上と同じビットクロック (32fs、1.4112MHz) です。 矩形波になっていますが、若干デューティが悪くなっています。 まぁ、DACで必要とするビットクロック、L/Rクロック、シリアルデータの3種類の入力シグナルはこの波形だと誤動作せずに受け取れると考えられます。 どうせR=2R型ディスクリートDACではL/Rクロックの周波数精度しか問題になりませんし...

ただし、普通のDACチップを使用する場合は、256fsや384fsのシステムクロックも必要なため、今回作成したようなフォトカプラでの回路では使えないかもしれません。

音質

今までの私の経験では、DACを改善していくと音がどんどんと「おとなしく」なっていきます。 つまらなくなると言っても良いくらいです。 もちろん奥行き感や空気感、細かい音の出方など、きちんと聴けばよくなっています。 それに比べて、改善前は音が滲んで妙なエコーのようなものが乗っているのが分かります。 ロックとかムード歌謡などを聴くときには心地よかったりもしますが、改善後の音を聴いてしまうと物足りなくなってしまいます。

そう言う意味では、このフォトカプラを通すと、若干エコー成分が乗っているような気がします。 まぁ、ガリガリに改善して潤いが無くなりすぎたような気もするので、気分によってこの基板を使用しても良いかな、と思っています。 エージングが進めば、もう少し良くなりそうな気もしてはいますが。


2004/2/22