今まで作ってきたCDプレイヤーのための要素を組み合わせて、箱に収めました。 以下のものを組み合わせています。
このうち、DAIFとDACは新しく作り直しました。
今回のCDプレイヤーでは、クロックにこだわってみました。
CDプレイヤーやDACでは、クロックのジッタが音質に悪影響を与えているという説があります。そのためにDAIFとDACの間のクロックにPLLを挿入したり、非同期の水晶発振器でリタイミングをしたり、いろいろな試みがなされています。ところが、何がジッタを作り出しているのか、ということに言及されることはあまり無いようです。
この問題について、手作りアンプの会の田村さんと検討したところ、CDの回転制御のサーボがジッタの原因ではないか、ということになりました。 CDはモーメントを持っていること、線速度一定なので再生箇所によって回転数が変わることから、回転数の制御にはサーボが使用されます。 このサーボは発振器からのクロックでCDの回転を制御しますが、CD再生で出力されるクロックは、回転するCDから読み出されるデータとしてのクロック信号なのではないか、という推測です。 つまり、モーメントを持つCDを可変速度で回転させるときに、いくらサーボ制御をしても若干の回転ムラが生じ、その回転ムラがクロックのゆらぎとして出力されるのではないか、ということです。 このゆらぎはCDプレイヤーに搭載されたオシレータのジッタとはあまり関係なく、ワンダ成分、つまりカセットデッキ等でいうワウフラッターのような遅い成分を含むのではないか、と考えています。
これを吸収するために、FIFOバッファを用意し、CD-ROMドライブからS/PDIFインタフェースを経由してDAIFから出力された”信用できない”クロックとそれに同期したデータをFIFOバッファで受け、”信頼できる”水晶発振器のクロックで読み出してDACに渡します。
これにより出力のクロックの揺らぎは解決できますが、CD-ROMドライブの出力の周波数と33.8688MHzの水晶発振器の周波数に差異がある場合、FIFOバッファの溢れまたは枯渇が発生します。 そのため、CD-ROMドライブをこの水晶発振器のクロックで動作させ、CD-ROMドライブからの出力の中心周波数をFIFOの読み出し側と一致させます。 これにより、FIFOバッファの溢れや枯渇は発生しなくなります。
なお、33.8688MHzの水晶発振器は100ppmのものですが、この場合の100ppmという精度は温度特性を含むはずで、通常使用する常温での揺らぎとしてはもっと精度が良いものです。 また、FIFOバッファの読み出しとDACの出力はこれを1/768に分周した44.1kHzを使用しますので、この44.1kHzの精度はかなり高いものとなります。
クロックの揺らぎの原因として、PLLも考えられます。このシステムではDAIFのPLLを通して出力されたクロックはFIFOバッファで終端されるため、水晶発振器の出力を分周したクロックのみが使用されます。これにより、PLLによる揺らぎのないクロックの音を聞くことができます。
(2004/01/12追加)
上記を測定しました。水晶発振器の出力を分周した32fs(44.1kHz×32=1.4112MHz)と、その出力をCD-ROMドライブに入力してそのS/PDIF出力をDAIで受けた結果出力されるBCK(32fs)を比較した結果、若干のジッタはあるものの、1τ以上のクロックのズレもとびもありませんでした。よって、メタステーブルさえ生じなければ、水晶発振器の出力でのリクロックで十分のようです。
ただし、水晶発振器を分周した32fsとDAI出力の位相差ずれは32fsは電源投入ごとにランダムに決定され、下のオシロスコープ画像のようにメタステーブルが気になる場合があるようです。よって、なんらかのFIFOバッファによるメタステーブルの吸収が必要となると考えられます。
上:DAI (TC9245N) の32fs出力
下:水晶発振器(33.8688MHz)を分周した32fs
MSI製のMS-8512という52倍速 ATAPI CD-ROMドライブを使用しました。新品で2500円の安価なものです。 分解すると33.86MHzのセラロックがついていますので、これを取り外して外部から33.8688MHzを供給します。 セラロックは2本足ですが、外部からクロックを供給する場合はどちらか片方に接続します。 どちらかがアタリでもう片方がハズレですが、動作する方がアタリですので試してみれば分かります。
秋月電子のスイッチング電源 (+12V 3A, +5V 2A)を使用しました。 800円と安価なものです。 CD-ROMドライブとATAPI CD-ROMドライブコントローラを、この+12Vと+5Vで駆動します。 また、+12VをLM317Tで受け、+8.9Vを生成し、DAIF、FIFOバッファ、DACの各基板で78L005を使用して+5Vを生成します。
このCD-ROMドライブは+12V 1.5A、+5V 0.9Aですので、結構余裕があります。 トランスを使用した電源でDACを駆動して、音質が改善されるか興味がありますが...
9mmのパイン集成材を使用しました。 リヤパネルは1mmのアルミ板で、フロントには3mmのアガチスの板を化粧板として貼付けました。 仕上げには「木肌マモール」というワックスを使用しました。
シャーシは幅238mm、高さ140mm(+ゴム足)、奥行き300mmで、内部は2層構造です。
CD-ROMドライブの取り付けは、東急ハンズで売っていた衝撃吸収材を使用してみました。これのおかげで、シャーシをたたいても音とびしません。
基板は、1mmのアルミ板を60mmのスタッドの上に取り付けて、その上に固定しています。
ノイズをかなり撒き散らしてTVにノイズが載るので、内部にアルミホイルを貼ってみましたが効果はよく分かりませんでした。
R=2Rラダー型ディスクリートDACで、150Ωと300Ωにしました。 抵抗は千石電商の1/4Wのもので、100本100円のやつです。 また、抵抗のばらつきを吸収するためにMSBビットには200Ωの多回転型半固定抵抗を使っています。
(2003/11/20追加)
150Ω/300Ωの場合、音質的には迫力もあり満足していたのですが、エレピの音が割れてしまうノイズが取りきれず、1kΩ/2kΩに変更しました。
抵抗値が低いと、HC574のバッファのばらつきか抵抗値のばらつきが顕著に出てしまうようです。
1kΩ/2kΩだときれいに出ていますが、迫力に欠けるような印象です。もっとも、歪んでいてノイズが載っていたせいで妙な迫力があったのかもしれません。
かなり満足しています。 静かで奥行きがあり、演奏の雰囲気が伝わってきます。 部材費は2万円程度なので、コストパフォーマンスは抜群です。 もっとも製作の手間は半端ではないですが。